ウロボロスが愛である
この間、知り合いが面白いことを言っていた。
人が人を好きになるのって難しいよなーって話題。
「私は私が好きだから、私のこと好きって言ってくれる人が好き。『あなた、私のことが好きなの？私も私のことが好き！一緒だね！！』って思う。」
これすごく軽い語り口だけど、金言ですよね。世界には自分しか存在しない、というか愛の方向は自分にしか向いていない感じ。最高。
前回のブログで、偽装の愛という言葉を使って親子関係のことを書いた。偽装の愛というのは、条件付きの愛。「子供だから」「親だから」「お金持ちだから」。その他諸々。色々書いた結論は、偽装の愛しかくれない母親にはうんこを投げつけろ！だった。
よく考えてみると、偽装の愛は愛じゃない。愛というパッケージでまとわれているけど、中身は違う。偽装の愛で育った人は、自分も偽装の愛でしか愛せないから苦しくなる。〇〇できない自分は駄目とか、〇〇にならなきゃいけないとか。条件が付いているものは、全部ダメ。というか、絶対苦しくなる。
条件って刻一刻と変化していくから、揺らがないものは無い。美貌があるから愛しているとか、若いから愛している。とかお金持ちだから愛しているとか。
相手そのものじゃなくて、見た目が好ましいとかお金が好ましいのであって、相手を愛しているんじゃない。株価は大暴落するかもしれないし、美の基準はいつ変わるか分からない。
だからね、僕は思ったよ。他人を愛するのは不可能だと。キルケゴールは「神を愛せよ」と言った。神はどうかわからんけど、他人は無理かもしれない。いや無理だ。
だって条件が無いと、愛することもできないでしょうよ。だからその条件を好きになるしかないのよね。それなのに、相手を無条件に受け入れます。って言っちゃう。違うね。条件が先に来て、それで受け入れるのが後。
結果、全てを受け入れられたらそれはそれで愛が成立するんだろうけど、僕はそんなパターンは無いと思っている。相手のこの部分は好きで、この部分は自分とは違う。絶対そういう風になっている。
だからね、本当の意味での愛は、自分から自分に向けてしか現れないんだと思うのよ。
その度合いの違いだと思うのよ。子育ても恋人関係も、夫婦関係も。
自分を愛しているから、他人にも「偽装っぽくない」愛を向けられる。本当は偽装だけどね。でもその偽り感は、限りなく少ない方が良い。条件というフィルターは透明に近ければ近いほどいいし、無いに越したことはない。
これが無いっ「ぽい」のが、一般に言われている愛ってものなんだと思う。夫婦円満、家内安全、弱肉強食、日進月歩。
特に子供にとっては、偽装の愛で育てられたって認めるのは、死ぬような思いをしないと越えられないって思っている。というか僕は死にそうになった。
他人に向けられた愛で、偽装じゃないのは無いよ。もしそうじゃないとしたら、よっぽど上手に仕立てられた偽装の愛。本当はこれが欲しいよな。
母親の訝しい顔も、辛そうな表情も見ることなく「これが愛情やんけ～」って幸せに満ち足りていたいよね。
でも、偽装は偽装。他人に向けた愛は偽装。そういうシステムなんだと思う。
ただ、装丁を綺麗にしてくれたよね。っていう思いやりに関しては、感謝できる。「偽装だって気づかずにいさせてくれてありがとう」って思うことはできる。
でも、これ愛じゃなくて、気遣いだからね。隣の人に迷惑を掛けないように、電話は店の外でするのと一緒。これをしたら相手が嫌かなって思う気遣い。
気遣いも愛だって言う人もいると思うけど、僕にとっては愛じゃない。
偽装の愛だって嬉しいと言えば嬉しい。特に他人からもらえた偽装の愛は結構嬉しい。
でも、もっと嬉しいのは「偽装の愛をもらえた自分を愛する」ということ。
気遣いであっても、条件がついていても、それを受け取れた自分が愛おしい。それを感じ取れる自分が大好き。そんな状態。
僕は、今万引きをしたらきっと自分を責めるだろう。そりゃそうだって思うけど、自分の愛で満たしていたのなら、責めないはず。自分にしか分からない理由があるだろうし、そうさせた社会にも問題はあるし、盗れる位置に置いてあるお店が悪い！（あくまで自分の中での話ね）って思える。しないけど。
もうちょっと考えてみる。「自分に向けられた無条件の愛」が愛だとするならば、「無条件」という条件が付いてくる。無知の知的な、ウロボロス的な。
あ、だからこそ自分という存在そのものが愛なんだ。愛するとか愛されるとかじゃなくて、愛そのもの。
条件の無い愛は、円環状に存在していて、永劫回帰。そんな性質なんだと思う。
だから、一度自分を愛し始めると、ぐるぐる巡っていって徐々に強くなっていくんだと思う。そしたら偽装かもしれないけど他人も愛せるかもしれない。
