僕を考える

心の言語化の場所としてブログを書いています。

おじさんにはビジネスホテル

ビジネスホテルに泊まる機会があった。

狭い部屋なんだけど、ベッドとテレビとトイレとお風呂がある。それだけでサイコーだなって感じた。

台湾に一人旅をしたときは、常にドミトリーで他人の気配を感じながら、いびきをかいたらどうしようってびくびくしながら寝ていたし、自分専用のバストイレがある時点でもう100点を越えていた。

東京にいる友達もビジネスホテルが好きらしい。適当に泊まって、適当な朝食を食べて帰るのが好きだと。すごくわかる。

誰かと行く観光旅行なら、朝食だって美味しい方が良い。その地の名物を取り入れた、多品種のバイキング。でもそれは要らない。ごはんにソーセージに漬物に、みそ汁。納豆と卵と茹でたようなシャケがあれば万々歳。

 

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普段食べない朝食なのに、ビジネスホテルだとがっついちゃう。和食とコーヒーを合わせるのが僕の定番。

 

いろんなおじさんがいた。エレベーターで一緒になった頭髪の薄いおじさんは、僕がカードキーをタッチし忘れて動かなくても、怒らないでいてくれたし(最近よくある外部の人が入れないようにするやつね)朝食会場でひとりでいる半そでシャツの人は、もくもくとただ自分の栄養補給をしている。トイレであったおじさんは、個室に入る僕のことを一顧だにしない。

皆、自分のことに集中しているから、他人に過剰な期待ももてなしもしない。そしてここにいる皆が、ひとりになりたいのがわかっているから、それに準じた行動をとる。

そういう規範でできているのがビジネスホテル。他人は存在するけど孤高でいられる。そんな感じ。

こういう雰囲気は女性にとってはあまり気に食わないものかもしれない。楽しいことを分かち合いたい。おいしいことを報告したい。そういうのは、ビジネスホテルにおいてはご法度。自分の満足と、自分が求める空気感を自ら作りにいく姿勢。

以前だったら、こんな雰囲気いやだなと思っていたと思う。もっと近くにいる人とコミュニケーションをとって、仲良くなって、何なら一緒にご飯を食べに行ってもいい。それを悪く言うつもりは無いし、基本スタンスはそっちより。

だけど、ビジネスホテルにおいては、そうじゃない。

おじさんが、一人に籠りっきりになれる場所。それがビジネスホテル。

 

ブルーガイドニッポンα 全国ビジネスホテルガイド

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更にビジネスホテル礼賛をする。

当然だけどお客さんはおじさんが多い。おじさんは、おじさんがゆえにおじさんを求める。おじさんはおじさんの習性を理解しているから、たとえ誰とも話さなくともおじさんの集団の中に溶け込む。

109が女子の聖地ならおじさんの聖地はビジネスホテルだ。かわいいファッションなんてない代わりに皆が同じようなシャツを着る。そこには他人と比較するオシャレなんて言葉は存在しない。

女子が好むパンケーキなんてない。代わりにコーヒーとみそ汁と白飯がたっぷり用意されている。

弾けるようなおしゃべりも存在しない。おじさんは、自分と会話したり、朝食の納豆ごはんと対話したり、見てもいないテレビ番組を嘲り笑う。それがいい。

 

カフェが落ち着くというのはよくわかる。コーヒーを飲んで、本なんか読んで、座りやすいソファーでたたずむ。贅沢な時間。

だけども、カフェはおしゃれなんだ。コーヒーとか、若くて可愛い店員さんとか、間接照明とかおしゃれが散りばめられている。おしゃれは落ち着かないんだ。おじさんはおしゃれじゃないんだ。カフェは、落ち着くのとおしゃれを楽しみに行くものなんだ。

 

おじさんはもっともっとどうでも良い扱いをされたい。気を張って、自分を強くみせたり、賢く見せたりしていて疲れている。場所とものだけ用意して、後は構わないでもらいたいの。

親切をしてもらって「あ、ありがとうございます!」って笑顔で言いたくないの。そこにいる間は、ただ無機質にそこに存在し続けたいだけの人間に代わる。

とびっきり美味しいコーヒーとか要らない。感想を起したくもないし、こだわりを感じようともしたくない。ただただ胃に熱くて苦い汁を入れたいだけ。誰とも関わらず、無限に出てくるコーヒーサーバーさえあれば良い。

普段はシャワーで済ませるのに、バスタブにお湯をたっぷり入れてうっはーーって言いながら入るが最高。夜入って、朝も入る。ガス代と水道代がもったいないからできないけど、ビジネスホテルではお湯を替えることが許されている。許されている感覚が重要なの。

 

女子の「構わないで!」は、構って欲しいの裏返し。

おじさんは構って欲しくないときは無言でビジネスホテルにチェックインする。

 

あぁビジネスホテル。心が傷ついたときにはビジネスホテル。