不機嫌とヒーロー
他人の幸せを願えない人はいる。
自分が不幸せだから、他人が幸せそうにしているのが許せない。自分を見ていない、無視されている!って思っちゃう。
無視されてるから、こっちの地獄に落とし込んでやろうっていうのが不機嫌な態度だと思う。
ある知り合いの話。その人はいつも機嫌が良い。理由を聞くと「俺は、自分の感情もコントロールできないでマイナスな感情を撒き散らかす奴はゴミだと思ってますよ。そういう奴を見て俺はこうならないように気をつけよーって思う」のだそう。
金言である。言葉使いは悪いけど、自分の制御の仕方を言語化できているっていう意味で優秀だと思う。
けど、不機嫌人間は現れる。甘えとか恨みとかをエサにして、怒る自分を正当化する。いや、結局自分がどうあるかだし、不機嫌以外の感情は他人に関わりないからな。
誰かと一緒にいて、その不機嫌マンだけニコニコ黙ってるならともかく、無表情で押し黙ってるのは不機嫌マンだからな。
もう散々書いたけど、まず自分の幸せ。そこから他人、そして社会っていう風に幸せの対象の抽象度がどんどん上がっていくもんだと思う。
だから政治家っていう仕事は個人を見る仕事では無いよな、と選挙の度に思う。
だって法制度がカバーする範囲って、下手すると1億人が含まれる。それの1人1人に対して政治家が「あなたはこれで幸せですか?」って聞いていく訳にいかない。
強豪校の高校球児が「応援してくれるみなさんのために勝ちます」って言うのと一緒よね。母数が多くなりすぎて、個人単位では語れなくなる。
抽象度と関連した話をもうひとつ。
ザボーイズというドラマを見てる。アメリカンヒーローの裏側に気が付いた、主人公らが何の能力も持たずに、頑張ってヒーローを追い詰める。
- 作者: ガースエニス,ダリックロバートソン,Garth Ennis,Darick Robertson,椎名ゆかり
- 出版社/メーカー: G‐NOVELS
- 発売日: 2017/09/08
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (3件) を見る
このドラマ、すごく面白いから見てみてほしい。アメコミ好きで、でもその馬鹿臭さを認識している人ならきっと好きだと思う。
このドラマで出てくるボスは、ホームラウンダー(マーベルでいうキャプテンアメリカ)という。
星条旗を背中に纏って、空を飛び、目からレーザーをだし、銃を通さない強い肉体で正義を執行する。彼から発せられる言葉は大衆の心をつかみ、熱狂させる。
これぞ、ヒーロー。そう、象徴であると思う。
象徴の好例は神。人が神を作ったのは、絶対的な正しさが必要だったから神を作った。神が元からあるんじゃなくて、この不可解な世界において絶対的な存在が必要だから、神をつくったが正しいと思う。(誰かに怒られるかもしれないけど)
とある知り合いのおじいさんも象徴として存在している。
ある業界では有名人。歩くパワースポットを自称するくらい。だけど、普通のおじいちゃん。ホームラウンダーみたいに目からレーザーは出ないし、きっとごみだってポイ捨てする(知らないけど)。
けど、そんなおじいちゃんでも象徴。
言いたいことが伝わるでしょうか。象徴としての存在は、他人が作りあげるのよね。
まぁある意味それが他人の存在価値であり、役割だとは思うけど。それ自体は、問題なんじゃなくて、人の一面しか見られないのが、恐ろしい程のアホさを内包しているってこと。そしてその無知さが、人を不機嫌にする要因になるよってこと。
ホームラウンダーは、人助けをするとき警察や市民に対して「君こそが本当のヒーローだ」と言ってから、悪者をやっつける。
食い物にされてるからな。祀り上げる側の人間が。腹の底ではヒーローは市民をバカだってみてるからな。こう言ったら、ファンは喜ぶでしょって思ってるからな。
一部だけ見て、全体を捉えない。というより都合の良いところしか見られてない笑笑って思われてるからな。知らないんじゃなくて、知ろうとしない分からないことが分かれない態度がアホだからな。
好きって、そんなもんと言えばそんなもんだし、裏があるかも!って疑い続けるのも疲れちゃう。
けど、他人の一面しか見ないで、見せなくなったら怒るって怖い。
アイドルが恋愛したら怒り出す人の心理状態よね。
アイドルもヒーローも予定調和だから面白いんだと思う。人は安心できる時に笑えるから、「山田君、一枚持っていて」で笑えるんだと思う。既視感による安心感。それが予定調和。
可愛いキャラ、ヒーローキャラ、キャラがあって、それをキャーキャー見てるお客さん。その構造が楽しいのであって、心酔して盲目化して傾倒するほどの人、世の中に存在しないよ。多分。
- 作者: リチャード・ドーキンス,垂水雄二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/05/25
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 257回
- この商品を含むブログ (185件) を見る
仏陀も母親も、役割演じてくれてるだけだよな、と思う。それを「心から信じる」とか馬鹿言ってんじゃねえよ、って思っちゃう。ほぼ自分に言っているけど。
キャラだから。仏陀キャラ、母親キャラ。ヒーローもヒールもキャラ。
きっと僕を含めた、他人に対して「ここが良い!!」って思う感情は、ほぼほぼ勘違いで、しかも自分で自分にしかけた勘違い。勘違いしにいってる。
好ましい女性は、妄想で素敵になりすぎる。
きっと道に唾だって吐くし、貰ったものだってすぐ捨てる。ただ勘違いしてもらうように、外面は良くしておいた方が良いだろうなって、網をしかけておくようにニコニコする。そんな具合。
自分にも、他人にも2面性どころか、思ったものと真逆の性質がある。陰と陽じゃないけど、かわいい娘には必ずかわいくない姿が存在するし、受け入れてくれる思った人が、実はめっちゃ冷たいとか。逆の性質が無いと、今見えている性質は存在しないのよね。
僕は自分のことを優しいなって思ってる。いつでも誰かを助けたいと思っているし、人のためになれることが必要だと思ってるし、実行している(つもり)。一方で、信じられないような暴言も吐くし、トイレで吐いているおっさんは介抱しない。
「そんなもん」というよりかは、両面の性質を併せ持っていないと片方の性質も表出しないっていう類のものだと思う。
だから、不機嫌マンにも明るい部分は(きっと)ある。そんでそうなれない理由も必ずある。
機嫌良く暮らしている人からすると、「その理由を一緒に考えてあげようかな」、「教えてあげようかな」って気持ちになる。
でもさぁ、家族ならともかく他人の感情に踏み入るって、大分リスキーで喧嘩別れ前提とも言える。だから言えないのよ。笑って誤魔化すしかないのよ。多くの場合。
キャーキャー言われているヒーローって目は笑ってないけど、口角だけ上げてるでしょ?そんな感じ。あれ困ってるからね。