僕を考える

八島遼三郎です。心の言語化の場所としてブログを書いています。

東京気遣いレスポンス

起きたら体がキンキンに冷えていた。薄暗い冷蔵庫に転がっている鶏肉みたいに一晩中体勢を変えていない。ベッドの冷えているところを探してゴロゴロするのが体温の高い人で、低い人は逆らしい。

外から眩しい日差しが入ってきているのに、レースカーテンを揺らしてる外気は冷たい。学生だったら夏服と冬服で迷う気温。衣替えの季節は毎度ドキドキする。真っ黒な学ランなのが僕だけだったらどうしよう、長袖似合ってないって思われないかなっていう自意識過剰さが未だに残った緊張。

白い長袖のシャツを羽織る。夏になると「やっぱりTシャツはいいよな~」って毎年思うんだけど、長袖を着て鏡を見ると「長袖も悪くない」って思い直す。毎年恒例の裏切られ。

外に出てみると皆半袖半ズボンで夏と同じ服装。スリッパ履きで、ぺらっとしたワンピースの彼女の肩を抱いたお兄さんが闊歩している。分かっていたけど、厚着したくなるのは僕の体温が下がっているから。カフェの店員も皆半袖。可愛く化粧をして、いらっしゃいませと消耗の少ない声を出している。

恐らく風邪を引いている。いくら9月とはいえ長袖シャツにパーカーを着ているのはおかしい。まぁ仕方のないこと。

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1.白い手提げバック

月曜日、部屋を探しに東京へ行ってきた。ちょうど台風が直撃した日。天気予報を見たら昼頃には大丈夫そうなので予定通り決行。出発は朝7時過ぎのバス。前日は緊張して眠れず荷造りを深夜3時にゴソゴソやった。以前失神した時は、睡眠不足&飲まず食わず&長時間の立位という、脳に血液が行き渡らない3要素が全て整っていた。今回は倒れる訳にはいかない。何とか脳への血液と血流を確保しようと思い、無理やり前日の残りを口に入れてから、家を出る。

少々の雨。バイクは静かにエンジンはかからず、いつも通りカラカラブォーンと言って早朝の住宅街の皆様に迷惑をかけた。15分くらいでインターチェンジに到着する。

バスに乗り込むと大学生くらいの男性が隣の席で寝ていて、僕の席であろう椅子に白い手提げバックを置いている。小さい声で「すみませーん」と言うと何も言わずパッとそれを取りまた寝始めた。隣に来るとか乗り場がまだあるとか把握してないよな。そうだよね。2回の休憩を挟んでも隣の彼は4時間余りこんこんと寝続けている。僕はハーフ昼夜逆転からの自律神経が少々狂いのために眠れない。羨ましい。

新宿についてバスが停車をする。僕が席を立った瞬間に彼は僕が来るまで置いていた白い手提げバックを、僕のお尻の置いてあった場所にすぐさま投げ捨てる。邪魔だったのはお互い様だからな。何なら足をこっちのスペースに出していたのお前だからな。

2.「ね」

新宿についてJRの入り口を見ると、白いワイシャツとリュックの人だかり。台風の影響で入場制限らしい。おおーこれがテレビでみるやつ。中央線がどうなっているのか電光掲示板を確認しに構内へ。すごい人の量。遅延しているし電車の本数も少ないらしい。時間が無い訳ではないので何か食べようと思う。失神対策失神対策、決してデブだからじゃないと心で唱える。

新宿だから何でもある、というのは幻想で、思ったようなものは思った場所には無い。ウェンディズには行きたくないし上田に無いなか卯も気分じゃない。

新宿南口から西口か東口に向かうには汚い金券ショップとかトンネルをくぐっていくなんて20代の頃は知らなかった。でも僕は東京に慣れているおじさん。ゴロゴロキャリーケースを転がすしまむらの服を来た女子とは違う。そういう自負をたたえて食べ物屋さんを探す。

ラーメン屋に入る。食券制。なんとかかんとかラーメンのボタンを押すとバングラデシュっぽい店員が「●●ラーメンはいりま~す」と気の抜けた声で言う。キッチンの奥にいるのは胸に「鈴木」と書かれたマスクをした顔の小さい人。やる気の無い外国人とやる気の無いマスクマン。ええな、荒んでて。東京らしいでぇ~、いやそれこそ東京やで~と僕の中の関西人がまくしたてる。

ラーメンが出来上がる。持ってきたのはマスクをした鈴木さん。「お待たせしました~」。あれ、女子じゃん。「ご飯お替りできるんで、言ってください『ね』」と、か細く丁寧な声で言う。「ね」が付いていると付いていないのでは全く違う。「ね」の威力。お好きにしてください、とお好きにしてくださいねでは全然違う。「ね」の効果は偉大。「ね」が無いとルールを伝えるだけの言葉。「ね」があると、ルールを提示してそのルールはあなたに適用されていて許している感じが出る。「ね」。

 

3.付箋

ラーメンで脳の血流を確保して再びJR新宿駅へ向かう。沢山人が歩いているのにガード下にいるホームレスゾーンは人が避けて通る。彼ら濡れた服を干していて、その表情は何だか嬉しそう。ホームレスでも関われるイベントが台風なんだと思う。「いやいや大変だよね」って話題が出来て、災害なのに生きるためのうるおいになっている気がした。品川や上野ではキラキラしたサラリーマンやビジネスもできちゃう女子ですけど??っていう人が沢山いる。そういう人達は東京の真ん中の方にしかいない。電車で数十分走るとどんどん田舎の人達が電車に乗ってくる。アイロンのかかっていない服に、意識が低いなんて気が付かない人達。

不動産屋では女性のスタッフが、立ち上がって挨拶をしてくれる。やめて欲しい。台風の影響だろうか、遅れてきた杖をついた女性の職員が少し離れたデスクに座る。スマホを見てそれを置き、一拍あけてパソコンを立ち上げる。違う女性社員が彼女の後ろを通って何やら大量の紙がまとめられている資料を取り出して来る。立ち上げたばかりのPCが置いてある彼女の机の上で、それを読む。彼女は気を利かせて付箋を取り出しながら顔を覗き込む。女性社員は気が付いていないのか素知らぬ顔。あぁ、何か間の抜けたというか、気の利かないというか、そういうちょっとの関係性が大事にできない感じの人達なんだな、と思う。資料を見ていた女性社員は何も言わずに資料を戻し、自分の席に向かっていく。彼女は表情を変えずに付箋をしまう。

僕の担当になったおじさんは、飄々としていて気が利いて良い感じ。おじさんはおじさん同士。

 

4.チェーン

20時過ぎのバスに乗るため新宿に戻ってきた。路上ライブをやっている人達が3組いる。出発まで時間があるから全員のを聞いてみる。1組目はイケメン風とイケメン風のEXILEと芸人のEXITを足して2で割ったような風貌。「次なにいく?ラブパレードにしちゃう?」と囁いてカラオケ音源を流している。全く上手くない歌に作りこんだ表情を当て込んで気持ち良さそう。7人くらいの女子がスマホカメラを構えている前を、自転車に乗ったおばさんが無情に通り過ぎても彼らの表情は変わらない。

2組目は「マリーゴールド」を歌っているこれまた2人組の男性。細いジャージにマスクを顎にしていたと思う。路上でカラオケすんの流行ってるのね。おじさんは楽器の方が心に響くけど。

3組目は福岡から来たという男女コンビ。スタンドバイミーを歌っている。女性の声は野太くコントロールされていて気持ちが良い。でもお客さんはいない。上手と人気は比例しないの東京の冷酷さを味わい彼らは帰るのか。出発10分前まで聞いて乗り場に向かう。はげていて太っているおじさんが運転するバスが深夜の高速道路をひた走る。アナウンスの内容は私語に厳しい印象。「乗り合いバスですので」って初めて聞いた。

降り場について、バイクに乗る。途中、ショートカットをしようといつもと違う動きをした。アクセルを回してもギアが噛み合わない。ぶぉんぶぉん言うだけで進まない。やっちゃった。「いろんなことあるよな~」と思いながら、深夜の18号線をバイクを押して歩く。途中のセルフガソリンスタンドにもしかすると直せる人がいないかと思い、声を掛けてみる。眼鏡で痩せた男性。「これちょっとおかしくてもしバイク詳しい人いたらな~と思って」と言うと「こちらは修理などは一切やっておりませんので~」とおどおどした様子で言う。すまんな、声かけて。と思って「そうですよね」と言って歩き始める。彼にも彼の同僚にも出来ることは無いんだろう。結果は変わらない。

この話を知り合いに言うと「今の若者はクオリティが下がっていますからね」という。自分の領域は自分の領域でそれだけしかしないんだ、と息巻く。

自分の席以外は空けば使って良い、ガソリンスタンドはガソリンを入れるところ。そんな風にして役割をきちんと守る。マルクスの言う疎外かななんて思う。一方で「ね」を付けられただけでこんなに嬉しい。

 

5.はちみつレスポンス

喉が痛いからはちみつを入れたいとカフェで注文したら、ロイヤルミルクティーを勧められた。初めて飲んだけど甘くて美味しい。これよ、おじさんが求めていること。糖分も欲しいんだけど、ちょっとの甘えを許して欲しいのよ。それがレスポンスよ。これがカフェアメリカーノでも「合わないな!!」って言って喜べるはず。