僕を考える

心の言語化の場所としてブログを書いています。

お盆にしたこと④

そのまた続き。

その日は、早く目が覚めた。放蕩というか逃避というか、小旅行というか、そういう目的のはっきりしない行動に、体がはまってきた。

ちゃんと景色や思い出に感動して、食べたいものを食べて美味しいと思う。人間らしさを取り戻そうっていう試みだったんだってこの日に気が付いた。

慣れた頃に終わるのが旅というもので、この日で一区切りをしようかなと思いながら出発した。

この日家を出たのは12時頃。お腹は空いている。ちょうどこの日行こうと思っていた方向にあるラーメン屋さんで食事をした。普段食べないラーメンを間を空けずに食べる。体は納得していないと思うけど、心は何となく満たされているような気がする。

 

札幌にいた頃、知り合った歌手の歌で「約束を破れ貸した金も返すな、携帯電話を湖に投げて誰かの自転車も乗り捨てろ」という歌詞があった。未来屋マサルさん。元気かな。

この歌が大好き。破れかぶれなんだけど、それ自体が自己同一性を担保する感じ。どうでも良くなるのよね。時々。いや、いつも。

 

その日は、一番最初に住もうと思った家を見に行こうと思った。松本方面に向かう国道に乗って、すいすい進む。道は混んでない。

その家は、一軒家。不動産業をしている方の別荘(?)のようなところらしく、破格の値段で貸に出されていた。

そろそろかな、と思って5分。もう着くだろと思ってから10分。もう通り過ぎたかなと思ってから5分。あぁー見過ごしたんだなと思って3分。目印になる児童会館のような施設があった。市内ではあるけど、ほとんど市外。

畑の中の道を通って、家の前に着いた。冬タイヤと子供用の自転車が置いてあって、家族が住んでいる。もしかしたら僕がここに住んでいて、同じようになっていたのかなって思う。でもあり得ない。というか起こってないからあり得なかった。

そうして鹿教湯方面に向かう。途中でトンネルを避けて脇道に入ると、鹿教湯温泉街がある。公共駐車場にバイクを止めて、併設されている足湯に入った。

以前、ここに遊びに来た時バイクのエンジンがかからなくなった。親切なライダーが手伝ってくれて、エンジンがかかった。そういえばその帰り道でもケンカして、バイクと車別々に帰ったなと思いだす。良くも悪くも無いただの思い出。

 

タオルを持っているから、勢い勇んで足湯に浸かる。そういえば、家族だった人が、上田から40分くらいのこの場所まで仕事をしようとしていたことがあったなと思いだした。当時は、なんで早く動かないんだ!って怒りにまみれていたけど、今となっては1人でこの場所に来て、訪れるかどうかわからないお客さんを待っていたんだなと思う。きっとそれと同じ景色を僕は見ている。そう思うと、頑張っていたんだなって景色がじわじわ歪む。今となってはっていう限定条件だから、こんな感情は自分勝手な満足。

近くにある公民館みたいな場所で太鼓の練習をしているらしく、どんどん鳴っている。それを聴きながら、思い出とか、感情とかに浸る。

足湯を出て、歩いてみる。お寺みたいなところがある。お盆だから、青木の道を走っていても、別所の道を走っていてもお線香の匂いがする。僕もどこかでお線香をあげたいなと思っていたから、100円を払って火をつける。中々うまく火が付かなかったから、大分燃やしてブンブン振って、落ち着ける。

それが灰になるまで、眺めていた。

お堂の脇にある、川の上のベンチに腰を下ろした。隣は老夫婦。小さい声で話している。川の流れる音と、セミの鳴き声と、風の吹く音。葉っぱで遮られた陽光が、絶妙にマッチして強制的に心を落ち着かせる。長野に来て、こういう時間を作りたかったんだよなって思い出した。でも、ひとまずはお休み。止めにはしないけどもうちょっと人生の終盤で良いやって思う。

涼しくて気が付いたら寝ていた。隣の夫婦も寝ている。夫はグデっとしていて、妻は口角を上げている。この2人にも色んなことがあって、ここに辿り着いたんだろうなって想像する。工場勤務の気難しい夫と、気立ての良い慎ましやかな妻。ケンカもするけど、夫が怒るだけで妻は取りなさない。そんなところまで勝手に考えて、立ち上がった。ちょうどその夫婦と同じタイミング。妻の方は会釈してくる。夫は僕に気が付いてもいない様子。ほらね、と僕の妄想が当たっていた根拠みたいなものを見つけて嬉しい。

本当は、鹿教湯じゃなくて武石に行こうと思っていた。けど道が分からない。帰るか、とバイクを来た道の方に向けたら、「青木はこちら→」みたいな看板がある。この道は曰くつきで、狭く険しい。でも、青木への近道。バイクなら行けるでしょうと、その道に入ってみる。

車もいないし、誰もいない道。時速20キロくらいで昇る。後ろから車が来たら迷惑だけど、一台すれ違っただけ。

青木村に着いた。青木村の最深部。公共浴場が2つある。その一方に入ってみる。

この温泉は温度が低いのがウリ。入っているおじさん達は、へりに頭を載せて口まで浸かって夢うつつ。鼻息で水面が揺れる。本当に寝ちゃうと溺れちゃうから、覚醒と夢の間を行ったり来たり。きっと羊水にいる時を思い出しているんだな、と思う。本当にみんなそういう半分午睡を楽しみに来るようで、来る人来る人こっくりこっくりしている。面白い。

温泉を出て、当てもなく市街の方へ向かう。途中で「別所→」という看板が目に留まる。今日は峠を越える日なんだ、と思い右折のランプを出す。

青木村にいたころ、温泉への行きかたがわからず看板を頼りにして、この道を行った。当時は峠だなんて分からずいったから、ひょえーーとなったけど、今は知っている。知っているから怖くない。そんな単純なことでちょっとした自信が沸く。途中の道で「今ではこんな道知ってるんだからねーーー!!」と大声を出してみた。

別所温泉では、ジェラートを食べた。そのあと、好きな神社にいった。近くにあるジェラート屋で今一度ジェラートを食べた。当然お腹を壊す。

夜ごはんは、暖かいものがいいなと思っていた。傷ついている時は、暖かくてしょっぱいものと決まっている。気持ち悪い表現だと思うけど、涙を補給するんだと思う。きもくてごめん。

 

旅の終わりは、やっぱりカフェ。

デカフェのフレンチプレスを飲む。ドキドキする。終わっちゃうことと、何にも変わってないように見える僕。

読みかけの本を進める。あ、となった。多分これだ、僕。となった。

この話は、また別稿で。

 

旅の間中ずっと流れていた、さっき書いた曲。頭の中に流れる曲って、自分の今置かれている状況と、歌詞がリンクして出てくると思う。

最終日になって、どこがリンクしたのか分かったような気がする。「ただ僕のこの優しさはいつか報われるのでしょうか」だ。